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榛名無名雑感
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第55号  向き合う
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   榛名の春


  私の教師時代、毎年、多くの学校行事がありました。 中でも中学3年生のコース別の「校外学習」には何度も引率していき、生きた生徒の姿に触れた思い出があります。 この「校外学習」では、全国各地での「説明・発表」に力を入れてきました。

  あるお寺の前で模造紙を広げながら、お寺の構造や五重の塔の意味について説明してくれた生徒。 鍾乳洞の水の透明度について皆に講義をしてくれた生徒。 コースの全ガイドを、バスのガイドさんに代わって班員が分担して説明しながら、旅をしたこともありました。 説明にあたっては必ず模造紙一枚以上を使用することがルールでした。

  奈良の明日香の田んぼ道を皆で古代人の気分で歩いていた時など、突然ある生徒が全員を止めて、ここで少しの時間だけ話をさせてくださいと申し出たことがありました。「こんなところで何をやるんだ?」と訊くと、「道」について話をしたいというのです。わずか二メートル幅もない田んぼの中の道を踏みながら、この道は日本最古の道で、朝鮮半島から日本海を経て真っすぐ大和の国に通じていた「大和路」と言われるのだと、熱のこもった説明を受けた時は、一同感動したものでした。

  また、東北の十和田湖を見下ろす発荷峠で、火山の火口に水のたまった十和田湖について説明をした生徒は、今、あるデパートの部長で活躍しています。彼いわく、「あの一枚の模造紙での説明が、僕にものを見る目を教えてくれた」と今でも言っています。

  皆、旅をしながら、何かに「向き合った」少年でした。 


  歳を重ね、私も初老になりました。 年老いた方々も、起きるべきして起きる病に向き合っているだけでなく、積極的にライフワークに向き合っておられます。

  やがて人間全員が向き合わなければならない最期の時に負けないために、何事にも目をそむけず向き合っていきたいと、願いながら。
 

2014・4・21

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